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Die Maiden des Regens zwei

 「ごきげんよう、由里香」

 「あ、蒼子。おはよう」

 ごきげんようの挨拶が出るときは蒼子の機嫌がいい証であることを由里香は知っている。ただ昨日まではいつもどおりだったのが今日になっていきなりご機嫌というのはさすがに由里香は気になった。

 「ねえ、蒼子」

 「なぁに?」

 蒼子は傘をさしているのに優雅とも呼べるほどの動作でこちらを向く。その唇にはわずかに微笑みさえ浮かんでいた。

 「何かいいことあった?」

 「え? いえ、とくには何もないけれど」

 なんでそんなことを聞くの、という疑問が顔に浮かんでいるのが見える。蒼子自身ではもしかしたら気がついていないのかもしれないと由里香は思った。

 「だって、今日の蒼子凄く楽しそう」

 「ああ、それはね」

 蒼子は納得したように頷く。

 「ほら、こんなに綺麗な雨は久しぶりでしょ?」

 「・・・・・・綺麗な雨?」

 「ええ、綺麗な雨」

 思わず繰り返した由里香に律儀にも蒼子自身も繰り返した。

 「わかりやすく言うのなら、激しく降るのではなくしっとりと降るといったところかしら」

 「しっとりと降る雨かぁ・・・」

 由里香は雨が自分にかからない程度に傘を逸らして、空を見上げながら答えた。昨日蒼子が教えてくれたから傘の準備は抜かりない。

 「やっぱりさ」

 「なに?」

 「雨降りの日が好きなんて変わってるよ、蒼子。雨の日っていったら普通は憂鬱になる人のほうが多いよ」

 「・・・そうね、そうかもしれないわね」

 これを言ったのは実は初めてではなかった。既に同じことを何度か言ったことがある。そして、その時の蒼子の答えはいつも同じだった。

 「でも、そんな日だからこそ楽しく過ごせたら素敵でしょ?」

 そう言って微笑む蒼子はとても綺麗で、その後には見惚れてしまうこともいつもと同じなのだった。


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