スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

[東方]博麗霊夢の怠惰なる一日 後編[SS]

博麗霊夢の怠惰なる一日 前編から


スペルカードルールによる決闘は命の奪い合いを行わない。

霊夢の札や魔理沙の魔法弾は、相手を気絶させることこそあれども、命を奪うことはない。

それがスペルカードルールによる決闘、通称「弾幕ごっこ」の流儀だからだ。

だがそれは、ある程度実力のあることが前提になる。

実力がなければ自分の能力をスペルという形にまとめることはできない。

では、その力のない、低級な妖怪や、妖獣。あるいは言葉さえ通じない獣に出会ったらどうすればいいのだろう。

弾幕ごっこをすることで勝負をつけることはできず、相手はこちらの命を奪い喰らうことしか考えていない。

その時は、心を冷まし、相手の命を奪う覚悟を決める必要がある。

それもできない場合には、

逃げ出せることを祈るしかない。






 博麗霊夢の怠惰なる一日 後編







がばっという効果音が聞こえそうな勢いで、魔理沙は起き上がった。

縁側に横になっていたようだ。起き上がった勢いで、体に掛けられていた肌掛けがはらりと落ちる。

そのままの当たりを見回して、横に座っている霊夢に気がつく。

「目が覚めた、魔理沙? 今回も私の勝ちね。」

そう言われた魔理沙は、気を失う直前に見た光景を思い出していた。

光り輝く7つの珠。

「ああもう! いいところまでいったのにまた負けちまった!」

「あれは確かに危ないところだったわねぇ……」

内容とは裏腹に、危機を危機と思わないような口ぶりで霊夢が応えた。

「負けたものは仕方がない。次こそ絶対勝つぜ!」

なぜか霊夢の方ではなく、空を見上げながら魔理沙はそう言った。

魔理沙は今までもずっと、そう言いつづけて何度も霊夢と弾幕ごっこを繰り広げていた。

何度負けても魔理沙は諦めるそぶりをみせることはなかった。

そもそも、博麗の巫女に挑戦しようとするものなどいるわけがない。

人間ならば、博麗神社に参拝こそすれ、その巫女に挑む理由はない。

しかし魔理沙は違った。

いつからか神社に出入りするようになり、霊夢と会話を交わすようになり、ある日勝負を挑んできた。

もともと物事を深く考えない性格である霊夢は、まるでお茶に誘われたのと同じようにその挑戦を受けた。

そして、当然霊夢は負けることはない。

今までもそうだったし、これからもそうなることだろう。

「はい、どうぞ」

そういって霊夢は湯呑みを差し出す。

「お、用意がいいな」

魔理沙はその湯飲みをうけとると、ぐいっと一息で飲み干す。

「だめよ魔理沙。お茶はもっと味わって飲まなくちゃ」

「わかってる、わかってるって」

霊夢の言うことなどどこ吹く風の様子の魔理沙。

急須の横にあるお茶請けを目ざとく見つけ、その一つを手に取る。

「お茶請けもばっちりあるみたいだな。おまんじゅうか」

「魔理沙がなかなか目を覚まさないからね。その間に用意したわ」

「む・・・、そういわれるとなんかしゃくだな」

そういいながら魔理沙は饅頭を口に放り込んだ。

「いつも言ってるけど、行儀悪いわよ」

「いつも言ってるけど、食べたいように食べればいいのさ」

霊夢も本気でたしなめようとするつもりはない。

この場には二人以外は誰もいない。人目を気にする必要もないのだから。

魔理沙はなにも言わず、縁側に再び仰向けになる。

屋根のひさしと空が目に写った。

霊夢はなにも言わず、急須に新しくお湯を継ぎ足す。

頃合いを見計り湯飲みへと注いだ。

弾幕勝負の後に、こうして二人でいることも、いつものことだった。

「やっぱり思った通りだったな」

「何が?」

「天気さ。今日は絶好の弾幕びより。」

そういわれて霊夢は空を見上げる。

青く広がる空。見渡す限り雲一つない。

「そうね、こういう空を飛び回るのは悪くない気分よね」

霊夢はほやんとした雰囲気の中ですっかりくつろいでいた、

……のだが、

「じゃあ、散歩でもいくか」

魔理沙はたまに脈絡のないことを言い出す。

「散歩ねえ…、ならついでに里に寄ってもいい? 食料品を買っておきたいのよ」

「里、か…」

その脈絡のなさにも動じない霊夢の提案に、魔理沙は少し逡巡する素振りを見せた。

「人里は苦手なんだっけ?。別に街の外で待っててもらってもいいけど」

「里は余り気がすすまないが、せっかくだからついていくぜ」

「そう、ならいいけれど」

魔理沙がそう言うのなら、といった表情をしながら霊夢は答えた。

「ああ、今日の夕飯、一緒に食べてく?」

思い出したかのように、霊夢は付け加えた。

「もちろんだぜ」

ニカッと笑い魔理沙は答えた。

弾幕ごっこ、お茶のみ、そのまま夕飯を一緒に共にする。

そしてそのまま泊まっていくこともある。

霊夢は魔理沙とのそんな関係をごく自然に受け入れていた。






神社を文字通り飛び立ち、人里へと向かう二人。

速く飛ぶ必要はない。異変解決に急ぐわけではないのだから。

頭上に広がる青い空。眼下に広がる森。遠くに見える山。

いつも通りの見慣れた景色。そして、そうであるが故に些細な変化にはよく気がつく。

晴れたとき、曇ったとき、雨が降ったとき、雪が降ったとき。

見慣れた景色に違和感が混ざっていれば、遠くからでも気がついてしまう。

「霊夢、あれ」

「うん、まずいわね」

魔理沙に促される前に霊夢は気づいていた。

空から見下ろす森の一角、少し開けた場所。

四足の獣の容姿。どこから見ても妖怪か妖獣だ。

その視線の先には、怯えながら後ずさりする子供。

「助ける」

そう言うやいなや、霊夢はその場所へと向かっている。

「博麗のお仕事ってわけだな」

軽口を叩きながらも、表情は引き締まり真剣な目で後を追う魔理沙。

その子供は恐怖の余り声を上げることもできず、体は引きつり駆け出すこともできない。

妖獣の四肢に力が篭り、今まさに目の前の獲物に飛びかかろうとした刹那。

「夢想封印 発」

弾幕ごっこ用ではない、物理的破壊力を伴なうスペル。

七色に輝く光の「弾」が獣へと降り注いだ。

「ギャウン!」

不意打ちによって体勢を崩された獣は、衝撃で後退しながらも自分を攻撃してきたものに目をやった。

見やった方に自分の食事を邪魔しようとした敵がいることを認識した瞬間、

「ガハッ! グrrrrr・・・」

さらに獣は吹き飛ばされ、背後に合った樹に叩きつけられた。

霊夢に続けて魔理沙が獣に向けて魔法弾を放ったのであった。

これも弾幕ごっこ用ではない、熱とエネルギーの塊。

獣はうなりながら起き上がると、眼前の人間を見据えた。

札を数枚ずつ両手に持ちながら、相手との次第に間合いを詰めていく霊夢。

右手には箒を杖のように構え左手には八卦路を持ち、かばうように子供の前に立ちはだかる魔理沙。

獣は自分が不利な状況にかれたことを悟ったのだろう。

一呼吸の間に反転し、森の奥へと駆け込んだ。

「逃がさない」

追いかけて止めをさそうとする霊夢。

「霊夢、大事なのはそっちじゃない」

魔理沙に鋭く声を掛けられ、はたと動きを止めた。

その間にすでに獣の姿は木々の間に消え去っていた。

霊夢が獣を追うのをやめ振り返ると、魔理沙は子供の様子を確かめている。

「間一髪ってやつだ。怪我はないのか?」

「あ、はい・・・」

「こんなところを一人で歩くなんて感心しないわね」

霊夢は魔理沙のところまで戻りながら言った。

「ずいぶん格の低いやつだったみたいだけど油断はできないわ。あなた、あいつに触れたりした?」

子供は声を出さずに首を横に振った。

「どうしてこんな里から離れたところまで一人できたの?」

霊夢が優しい声色で問いかけた。

「ええと、かあちゃんが病気で寝てるから、よく効くっていう噂の薬草を取りに行こうと思って…」

助かったことがわかって安心したのか、だんだん表情や声に力が戻ってきている。

「そしたら、そこの木のかげからあいつがでてきて。こわくて足がうごかなくて……」

いつのまにかしゃがみこんだ霊夢は、子供と視線を合わせながら話を聞いていた。

「うん、噛付かれたりしてないなら大丈夫ね。毒を持ってたりすると厄介だから」

続けて霊夢は問いかけた。

「あなたのお母さん病気なのね?」

こくりと子供はうなずいた。

「魔理沙」

「ま、乗りかかった船って奴だな。確かにこの先に薬草として使える植物の群生地がある。」

魔理沙は帽子を被りなおし、箒にまたがるとどこかへ飛んでいった。

「私達が診てあげるわ。お母さんのところまで案内してくれる?」

「う、うん。でも薬草が・・・」

「大丈夫。今の黒いのが取りにいったわ。それに多少の薬も用意してくるでしょう」





「どうやら風をこじらせただけのようだったな。薬草を使うまでもない症状だ」

子供を送り届けた帰り道、魔理沙は霊夢に話しかけた。

「私達で見当がついてよかったじゃない。手に負えなかったら本業を呼ぶつもりだったけど」

そう言う霊夢の両手には、風呂敷や布でつつまれた荷物が抱えられている。

霊夢と魔理沙は里にたどり着くと、子供を送り届けその母親の様子を診た。

幸い、命に別状のある様子ではないようであった。

高熱が出て、そのまま眠りこんでしまった際に、子供が里を抜け出して薬草を取りに行ってしまったのだ。

母親が目が覚めてみると、子供がいない。熱が下がったばかりの体で飛び出して、里の者に捜索の助力を願った。

そうしているところに、霊夢と魔理沙がやってきたのであった。

幻想郷に住むものならば、博麗のことは良く知っている。

また、その友人である黒い魔女のことだって、それなりに知られている。

子供を見つけてくれただけではなく、妖獣から助けてくれたことを知り、里の者達は博麗の巫女に大いに感謝した。

「おかげで食料をいつもより多く手に入れられたわ」

「あそこで無理に断るってもおかしな話だしな。私も少しもらえたし」

霊夢が買い出しに来ていたことを里の者たちが知ると、いつもの買い物におまけとして余分に持たせてくれたであった。






「だんだん暗くなってきたな、そろそろ夜の住人達の時間だな。」

竈の前で火の様子を見ていた魔理沙が言った。

「そうね。昼間のあいつもまたどこかを駆け回っているでしょうね。ん、いい味。」

霊夢は鍋の中身を少量とり、味を確かめながら答えた。

「やっぱあんとき止めない方がよかったか?」

その魔理沙の独白のような疑問に、霊夢は鍋をかき混ぜる手を休めずに答えた。

「妖怪は人を本能にまかせて襲う。人は身を守るために妖怪を退治する。確かにそれが幻想郷のルール。

でも退治すると言ったって、必ずその命を奪わなければいけないわけではないわ。」

「うん……、そうだよな。その通りだ」

変わらず竈の前にかがんでいた魔理沙はそう言い、最後の仕上げに一度に吹かすため火力を上げようとし始めた。

作業の程はいつもと変わらぬ魔理沙の姿を横目に見ながら霊夢は続けた。

「そりゃ博麗は妖怪を退治するけども、目に付く妖怪片っ端から殺して回るなんて真似は決してしないし」

「ははっ、そんなことしたら大問題だな。スキマが黙っちゃいないさ。」

その例えは極端すぎたのか、魔理沙はさもおもしろい冗談を聞いたような顔で笑った。

と、何か思いついたのか、霊夢を振り向いた。

「じゃあさ霊夢」

「うん?」

「今この瞬間。あの獣が懲りずに人を襲おうとしてたらどうする?」

「そりゃその人を助けたいけど・・・。目の前にいないわけだし、どうしようもないわね」

それを聞いて魔理沙は、いたずらしたことを隠している子供のような表情をしながら言った。

「人を守るのが博麗じゃないのか?」

「博麗は、」

その意地の悪い問いの答えには、霊夢は一呼吸おいた。

「博麗の巫女は異変解決が生業なのよ。襲い襲われなんて本当は関係ない。

 でも目の前で襲われてたら助けるわ。私には助けることができるんだしね。」

「くくっ、霊夢らしいな。」

さもおもしろい冗談を聞いたような笑いをこらえつつも、火の調整はしっかり行っている。

「それに、夜に一人で出歩くような人間の面倒までは見切れないわよ」

「そりゃそうだよな。おっと、もういいだろう。」

 話をしている間に、鍋は十分に仕上っていた。火を消す魔理沙。

 もらった野菜や肉を煮込んだ鍋からは湯気が立ち、その横では炊きたてのご飯が蒸されている。

「くー、うまそうだな! さっそくいただこうぜ」

遠くの森から、獣の遠吠えのような声がかすかに聞こえていた。



コメント

コメントの投稿


管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

http://moekokoromoe.blog28.fc2.com/tb.php/811-2c614493

この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)